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「LIVE & CULTURE」 WEB MAGAZINE by HOT STUFF

「LIVE & CULTURE」 WEB MAGAZINE

食べ物つながりで歌を味わうコラム 「よんで きいて たべる」 第3回 炭酸飲料

夏が去り行くのと
炭酸飲料の炭酸が抜けてくのは
誰にも止められない。

夏は炭酸飲料が
欲しくなるけれど
そこに求めているのは
清涼感だけじゃない気がする。

炭酸が抜けてゆくことを
気が抜ける、ともいう。

しゅわっと沸き上がった
「気」持ちや「気」分、
そのほかはっきりしないものごとを
泡に乗せて放っておいたり、
はじける泡の刺激の力を借りて
無理に何とかしようとしてみたりと
そんな感じで
うたかたに気の処理を
ゆだねていると
どんどんどこかへすり抜けて
消えて行ってしまう。

勢いのなくなった発泡を
すでに懐かしく
喉に感じながら
静かになってしまった水面を
ただ見つめる夏の去り際。

 

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ゆらめく
ソーダ水越しの視界の中で
何もかもが泡みたいになって
しまう 「いつか」が訪れる前に
このままを永遠にとどめたくて
匂いや声や手や肌、あらゆる感覚で
安藤裕子の描いた
「あたし」は
「あなた」を捜す。


山手のレストラン、昔と変わらない思い出の場所。
そこでユーミンの描いた主人公はひとり、
「あなた」を思い出していた。
じっと見つめるグラスの中には
小さなアワが消えていくソーダ水と
進む貨物船
それぞれにかつての恋を重ねて…


揺れて、迷って、
たら・ればを思って、
踏み込めなくて…、
そんな曖昧なあれこれを
揺れる泡にのせて
はじけさせていたら
気が抜けていってしまった。


気が抜ける前と抜けた後では
世界が変わる。
くるりの描いた「僕ら」は
新しいジンジャーエールの鮮烈な炭酸で
気をリセットして

また、旅に出るんだ。

 

 


今回とりあげた曲
安藤裕子『のうぜんかつら』
歌:安藤裕子 作詞:安藤裕子 作曲:安藤裕子/山本隆二 編曲:山本隆二
収録アルバム
『Merry Andrew』
(2006.01.25リリース)他
https://www.ando-yuko.com/discography/albumdetail.php?myPost=900
Official Site:https://www.ando-yuko.com


荒井由実『海を見ていた午後』
歌:荒井由実 作詞:荒井由実 作曲:荒井由実
収録アルバム
『MISSLIM』
(1974.10.05リリース)他
https://yuming.co.jp/discography/album/original02/
Official Site:https://yuming.co.jp


くるり『ばらの花』
歌:くるり 作詞・作曲:岸田繁 編曲:くるり
収録アルバム
『TEAM ROCK』
(2001.02.21リリース)他
http://www.quruli.net/discography/teamrock/
Official Site:http://www.quruli.net